15. ストリートの新境地「3Dグラフィティアート」

2015/05/15
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外壁に描かれたグラフィティアートは、さながら天空を舞う竜のよう。壁面を縦横無尽に走るその文字が、いつか壁から抜け出して大空へと飛び立たないかと、子供たちは空想する。そんな子供たちの夢を現実にした作品が、Rinkak「3Dプリントデザインコンテスト」のグランプリ作「Genghis 3D Style Writing」だ。作者のGenghis(Benjamin Cann)は日本の折り紙に影響を受けて、創作活動をスタートした。



Grand Prize受賞おめでとうございます。改めて今どのようなお気持ちでしょうか?


Benjamin Cann(以下、B):
賞をいただき大変嬉しく思います!結果を楽しみにしていましたが、まさかGrand Prizeをいただけるとは思っていませんでした。私の誕生日前日にお知らせをいただいたので、よりいっそう興奮しました。その週末は友人と盛大にパーティーしましたよ!





受賞作品 “Genghis 3D Style Writing”は見事に3Dグラフィティアートを表していると思うのですが、一体どのような発想があったのでしょうか?


B: このような3D彫刻を2年前から探求していまして、より凄みのある造形表現方法を模索していました。実は、様々な文字や名前を2Dや3Dスケッチで大量に作成し、それぞれが自分の感情や精神状態を表現するような、有機的な作品や激しい作品もたくさん作りました。
2014年11月に”Genghis”を作り始め、3Dプリントしようと2015年1月に思いつきました。
彫刻的なフォルムを繰り返して制作できるコンピューターならではのプロセスは、私の制作において大きな鍵を握っています。いかに複雑な表現が自由にできるかより、いかにどのアングルからも美しいフォルム/プロポーションで見せることができるか、専念することができるのです。グラフィティもしくはレタリングの美しさを三次元的に再構築することの狙いは、空間上に置き直されたその美しさを様々な角度から楽しむことなのです。
自分ならではの3Dグラフィティをデザインしていくにあたり、Graffiti TechnicaやアーティストのPeetaにもインスピレーションを受けました。



[ Back Crooked Grind / Para-lel ] 2010 Photo by Genghis

[ My Longboard - Loaded Dervish / Self designed, hand cut griptape. ]
2011 Photo by Genghis



“Genghis 3D Style Writing”をデザインする際、最大のチャレンジは何でしたでしょうか?


B: 「3D作業はもう終わりにして、3Dプリントしよう!」と自分に言い聞かせることでしょうか。個人的な楽しみから始めたので、作業の具体的な締め切りはありません。コンテスト開催の告知を聞いて、これはぜひ応募したいと思い、試しに3Dプリントしました。「Done is better than perfect! - 完璧を目指すよりまず終わらせろ!」ですね。


“Genghis 3D Style Writing”をどのようなアートファンに見てもらいたいですか?


B: グラフィティファン、DIYメーカー、または都会的なアートファンより更に、三次元的な解釈による普遍的な造形表現として、3Dプリントが好きなファンにぜひ見てもらいたいです。3Dプリントの素晴らしい点は、リアルなアート作品がより簡単に共有できて、より多くの人々に共感してもらえるところだと思います。
素晴らしい彫刻作品やデコラティブなオブジェは時間もスキルもすごいかかり、結果ユニークな作品に仕上がります。3Dプリントによって、そのような卓越した職人的なデジタル技術をより簡単に共有することができるのです。


普段はどのようなお仕事をなさっているのでしょうか?


B: メカニカルデザインエンジニアとして、以前は素材研究や航空宇宙業界で働いていました。それ意外にも、例えば写真などアートやデザイン活動もしていました。2014年9月から、3Dデザインとエンジニアリングの領域でフリーランスで仕事を行っています。ジュエリーから航空宇宙まで、幅広い分野で自由に仕事ができることが気に入っています。


“Genghis 3D Style Writing” を例えば他の生物か何かに変形させることなんてできるのでしょうか?もしそうなら、どのようなものになると思います?


B: それは良い質問ですね!過去のスケッチの一部には動物のような案もあって、そのような方向性も探ってみたいです。“Genghis”のデザインは古代魚、もしくは深海魚に変形させることができるかもしれないですね。いずれにしても、今回の受賞をきっかけに、ぜひ更なる探求してみたいです!もちろん、フルカラーやより大きなサイズでプリントも!


[ Rhino 3D Model & Print / 3D Printed Models in Black Steel and Polished Brass ]



3Dに関係なく、「デザイン」を始めたのはいつ頃でしょうか?


B: 他のたくさんのエンジニアと同様、レゴで遊んだ子供の頃でしょうか。説明書通り組み立てることができず、いつも自作のアイデアを組み立てていました。もう一つ重要なきっかけは、折り紙に初めて触れた7歳の頃です。私の祖母が本を薦めてくれて、純粋な「デザイン
」ではないかもしれませんが、それ以来今でもずっと折り続けています。日本の巨匠、神谷哲史や小松英夫の作品を折ることが大好きで、自分の作風にも大きな影響を与えていると思います。


どのようなきっかけでデザイナーとして活動を始めたのでしょうか?


B: 工学系の学校に通っていた際に、学生会に向けてグラフィックデザインを提供したことが最初の仕事でした。パーティーのフライヤーやロゴ、メダルなどなど。2007年のことです。それ以外にも、Tシャツなどのグラフィックデザイン関連のコンテストに参加し、小さな賞をいくつかいただきました。
https://www.behance.net/gallery/815278/T-Shirts-Designs-(2008-2010)


デザインするにあたり、特にどのような心がけをしていますか?


B: オリジナルなコンセプトやプロダクトを提案するようにいつも心がけています。しかし、何か決まったルールを設けてはいません。まず自分が気にいるかどうか、そして自分の直感を大切にしています。フィニッシュとプレゼンテーションもとても重要です。



[ Organic Snapology (2013) ]
Organic structure design mixing computionnal design and modular Origami folding techniques.


デザインするにあたり、どのようなインスピレーションを大事にしますか?


B: 芸術的や感動的な物ごと、複雑さや奇抜さ、自然や動物、そしてたまにバカらしいことからもインスピレーションを受けます。


3Dプリントデザインを始めるきっかけは何でしたでしょうか?


B: わずかな予算とツールで、デジタル作品に簡単に触れて活用することができる、歴史的にとても大きなブレークスルーだと思います。
この技術の可能性に気づいた時、より複雑または有機的な作品が制作したく、新たなモデリング技術を勉強し始めました。それ以前まではソリッド系のモデリングソフトを使っていて、ポリゴン系のモデリング経験はほとんどありませんでした。Nurbs系、またパラメトリック/ジェネレーティブなモデリング方法に出会うことは、更に複雑なデザインを実現するためにとても重要でした。


これまでの3Dプリント制作はどのようなものでした?


B: 試行錯誤の山ですね!例えば、エスプレッソカップでは5回ほどデザインやり直しを行いました。3Dプリントの可能性にチャレンジする3Dモデリングであることが肝でした。
プレビュー画面上ではデザインの最終評価はなかなか難しく、何回もの試作と忍耐が必要です。
これまでの経験からやっと、デザインしながら最終的な見栄えも予測することができ、より満足のいく3Dプリントが行えるようにもなってきました。エンジニアとしてのバックグラウンドや、素材/製造分野での経験にも助けられています。




今後制作予定の3Dプリントデザインは?


B: 大量のアイデアとプロジェクトがあります。ひとつが家庭用品のデザインと、あとは3Dグラフィティです。他にもジュエリーがあります。もちろん、Rinkak上でも販売しますよ。


どのようなデザインソフトをお使いですか?バージョンは?


B: デザインの特性に合わせて、4,5種類のソフトを使ってモデリングします。一番好きなソフトはRhinoceros5でしょうか。複雑な形が簡単に作れ、Grasshopperという素晴らしいアドオンソフトのおかげでパラメトリックなモデリングも行えます。折り紙とパラメトリックモデリングを活用したプロジェクトも、このソフトで現在取り組んでいますが、2012のソフトを使い始めました。他のCADソフトと同様に、ネットで勉強したんです。私のスキルのshowreelとして、Rhinocerosを活かしたモデルを作成してRinkakにアップしています。ジュエリーとして金属で3Dプリントされると美しく、ぜひプロダクトページをご覧ください。







CREATOR PROFILE

Benjamin Cann a.k.a Genghis

rinkakでのユーザー名はGenghis。ドイツに拠点を置くフランスのメカニカルエンジニア/フリーのデザイナーであり、Eugenio3Dの創設者兼ディレクターでもある。 主に3Dエンジニアリングと設計ソリューションを担当。2014年9月に活動開始。


Genghis's shop


INTEVIEWER


新井 優佑(あらい・ゆうすけ

インタビュアー。7年の出版社勤務を経て、独立。町工場を取材する中、日本の零細企業や小規模事業者の創意工夫には、仕事を豊かにする根源的なリソースが満ちていることを実感。手仕事からFabまで、作家の試行錯誤を追う。趣味・インタビュー、特技・インタビュー。
Twitter・ar1ys1c、Facebook・arai

Twitter・ar1ys1c、Facebook・arai1983




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