08.「職人技とFabの解け合う未来」jewelephanaさん

2015/01/09
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ハンドメイドの洗練さとデジタルの精巧さ。双方を融合して生み出される新しい価値は、あらゆる産業に明るい未来を誘う。その先導者はさしずめ“未来からの使者”と言っても差し支えない。jewelephanaさんは宝飾界に新風を巻き起こそうと、ジュエリー製作に3Dプリンターの導入を決めた“使者”だ。職人たちと繰り返す恊働の酸いも甘いも体験し、これからのジュエリー製作を携えて世界に臨む現状に迫った。






■いつから3Dプリンターの活用をスタートしましたか?

jewelephanaさん(以下J):8年前、今で言う3Dプリンターに当たる光造型機を利用して、ジュエリー製作をはじめました。ただ、当時はまだまだ高嶺の花で、高額かつ複雑なジュエリーリフォームでしか利用してはいませんでした。私自身、優秀な職人とその得意分野を掛け合わせて製作していくことを「かっこいい!」と構えていたんですね。それが、ここ数年でその凝り固まった考えを打ち砕かれる出来事に直面していったんです。



■ぜひ、そのターニングポイントをお聞きしたいです。

J:お客様の想いを込めたデザインを描き、OKを頂いて、いざ職人と打ち合わせをしても、「できる? できない」「そのデザインは作ったことがないので無理…」といった返事が多かったんです…トホホ。デザイン先行で製作が後回しになってしまっては本末転倒。ジュエラーとして、息詰った時は常にチャンスの入口に立った証だと思うんです!


rinkakに出品中の作品はどれも現物を想起しやすいレンダリングが魅力。



■jewelephanaさんの見つけたチャンスが3Dプリンターだったんですね…!

J:20年来の仲間から、3DCADの案内が届いたんですね。「助け舟?!」と思いました。そのまま、3DCADと3Dプリンターの使い手に投げてみたところ、翌日にはメールに画像が添付されて返ってきて、イメージ通りのジュエリーがパソコン上に仕上がっていたんです。これこそイノベーション。新しい価値をここ香川県高松市にも! と興奮しました。

特にデリケートなジュエリーリフォームは、仕上がりの不安を取り除くこと、そして満足してもらうことが一番だと感じていました。今までならデザイン画でしか確認できず、見ることができなかった部分がある。3DCADなら360度くまなく見てもらえる! 3Dプリンターが、新時代のジュエリー界を席巻すると思いました。3DCADでデザインすることは私にとってまさに鬼に金棒でした!







■rinkakへの出品作には「SAMURAIリング」や「さるシリーズ」といった、侍、猿、歌舞伎等の日本文化を取り入れた商品が多く見受けられます。その理由は?

J:日本は海外の良い物や文化を吸収して、アレンジして発信することが得意な国。でも、「日本のものは良い!」だけでは発進力が弱く、何かをプラスすれば他国にも受け入れられるはず。だから私の場合はジュエリー。身につける物に日本文化をマッチさせて、世界の人にも身に付けてほしい。利用してもらえる物を作っていくことが、文化や伝統を残していくことに繋がる。新しい価値や意味をもたらすと思っています。

結局、人は面白い物を面白いと感じるし、楽しい物は楽しいと感じる。それを追求して、世界に通用するプロダクトジュエリーを作っていきます。







■実際、3Dプリンターでの製作にハンドメイド時代の経験を活かすことはできていますか?

J:先代はよくこう言っていました。「人がジュエリーを手にしたり購入するのは、常に嬉しい時や幸せな時で、前向きだ。その気持ちと同じマインドセットで事に当たれ」と。技術面だけでなく、気持ちや感情等の見えないところがデザインやアイデアに大きく影響します。

また私は直接バーナーで、ゴールド、プラチナ、シルバー等を溶かして、金槌で打ち、ローラーで引き、ロー付けもしてきました。アナログ製作での体験を通して培った、素材の知識を持っていることは大きいです。


着けたイメージが湧きやすいよう、購入者の目線に立ったアプリ[ Jewel Ephana ]も人気。


これはジュエリー製作一般のノウハウですが、本体の厚みはリングであれば最低1.5mm厚。爪は本数や留める石の大きさ次第ですが最低0.8mm厚。もちろん、磨きで薄くなることも考慮しなくてはいけません。爪は位置、接点、掛かり具合、座りも要チェックです。

だから、3Dプリンターならではのプロダクトとして適した作りやデザインが必要。今のところ、石留めのない物やサイズ展開の融通が利く形を多く揃えています。

ハンドメイドではいくら職人の手に掛かったとしても、デザイン画を実物にすること自体がとても難しい物でした。でも3Dプリンターなら正確な原型作りが叶います。それに職人の技が光る石留め、磨き、仕上げを組み合わせることで、より良いジュエリーが完成します。








CREATOR PROFILE


jewelephana

本名・大山剛。株式会社エファーナ代表取締役。小売店向け営業担当として全国を訪問しながらジュエリービジネスに必要な知識を習得。愛用の3DCADソフトはJCAD3 GLBとBASIC、123 Design。ジュエリー製作に適したJCAD GLBをメインに活用する。お客様にはグラップス社の提供する“nStyler”の「nPhoto」「nv360」を利用した“バーチャル試着”も行う。
★jewelephanaさんのrinkakショップはこちら★


INTEVIEWER


新井 優佑(あらい・ゆうすけ)

インタビュアー。7年の出版社勤務を経て、独立。町工場を取材する中、日本の零細企業や小規模事業者の創意工夫には、仕事を豊かにする根源的なリソースが満ちていることを実感。手仕事からFabまで、作家の試行錯誤を追う。趣味・インタビュー、特技・インタビュー。
Twitter・ar1ys1c、Facebook・arai1983

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