13.「宇宙を手元にテレポートさせる3Dプリンターの魔力」quriharaさん

2015/03/20
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“「触って感じる宇宙、使って感じる宇宙」って、素晴らしいと思いませんか?”。

月面に浮かぶ人面岩を模した出品作品「【お菓子、石鹸、ろうそく用】月の人面岩(グレイ)の型」の紹介文はこう締めくくられている。その奇妙なビジュアルと、相反するクールな紹介文からは、底知れぬほどの宇宙への想い(ともすれば情念)がにじみ出ているようだ。一体、どんな目的で出品したのか。真意を探るため、quriharaさんに宇宙と3Dプリンターの世界観を伺った。すると、類希なる技術者集団の姿が明るみになったのだった…!




■早速ですが、quriharaさんの出品作品「【お菓子、石鹸、ろうそく用】月の人面岩(グレイ)の型」がとても気になります…!

qurihara(以下Q):これは、私の参加している宇宙発見プロジェクト「marface project」のメンバーによる共同研究の成果なんですね。「International Space App Challenge」という宇宙情報を活用するハッカソンを通じて知り合ったメンバーとプロジェクトに取り組んでいます。

私自身は女子大で情報科学を教えているのですが、メンバーにはニコニコ動画のニコニコ技術部で活躍する世界最高水準の技術者や、プロのデザイナー、ライター、中学生ハッカーなどが参加していて、それぞれの専門性を活かしています。




marface projectの皆さん。楽しそうですね!quriharaさんは一番左手前の方です。



■marface project…活動の目的は?

Q:いくつかありますが、そのうちの一つ、「宇宙にはエンターテインメントコンテンツがまだまだあることを実証する」という目的は特に、3Dプリンターによってブレイクスルーがもたらされました。3Dプリンターは、この世界のすべて、それが宇宙の果てにある物であっても、目の前にテレポートさせることができるんです。



■なるほど、テレポートですか! 宇宙がグッと近づいてくるような感覚がして、ワクワクしますね。

Q:そうなのです。宇宙に対する特別感をなくしたいと思っているんですね。なぜ、お金持ちは宇宙を目指すのでしょう。なぜ、宇宙に行くために人が命を落としたりするのでしょう。「宇宙ロマンの追求」には、何も莫大な予算や人命を賭けなくてもいい、在宅で面白くできるんだというビジョンを示したいと思っています。



発表論文より抜粋。



登壇するquriharaさん。こんな壮大なプロジェクトだったんですね。
このウィットに富む感じ・・・ いい!




もちろん、我々が宇宙データにアクセスできるのは、莫大な予算や人命を賭けた結果ですが、だからこそそれを無駄にしないよう、骨の髄までしゃぶりつくす気持ちで、有り難く使わせていただいております。

最近はkikyu.orgのように、低コストで宇宙を目指す動きもあって、身の丈にあった形で宇宙ロマンを追求できる時代がやってきたんだなぁと感慨深いです。



■実際、この「【お菓子、石鹸、ろうそく用】月の人面岩(グレイ)の型」はどのようにして創作し、rinkakに出品なさっているのでしょうか。

Q:まず、「NASA Jet Propulsion Laboratory」という、NASAの精細な衛星写真が公開されているデータベースから数々の写真を取得します。その写真から、特定の物体を検出する「パターン認識技術」によって、人面や動物、人工物に見える画像を検出するんです。ちなみに検出には高性能なマシンが必要なので、「Microsoft Azure」を活用しています。それでも、検出作業には何日も掛かるんですよ。



検出結果が出たら、メンバーで目視して、写真を選別します。面白い物に限り、marface projectのWEBサイト等で公表しているんですね。その中でも、特に興味深い月の人面岩について、平面の衛星写真から奥行きを推定して、3Dプリンター用のデータに変換したのが今回の作品です。今はNASAが3次元データを公開しているので、奥行きのデータも直接取得できるようになっています。


ご本家へのリスペクトを感じるロゴ。他の結果はこちらをチェック!


実のところ、市販のソフトは使っておらず、環境から自作しているんですね。自分たちが使いやすいように、改良を続けています。それが自作ソフトの良いところですよね。

ところで、3Dプリンターで出力できるデータ自体は、テキストエディタさえあれば、実は誰でも作れるんですよ。大雑把に説明すると、出力したい形状の3次元座標を数字で並べてあげればいいんですよね。



■テクノロジーにお詳しいんですね。そんなquriharaさんがrinkakを使う理由は?

Q:人が集まるための「機能」をもったインターネットコミュニティサービスを作ることができるとしても、実際に人が集まり、物が流通するかどうかは別問題です。この点に関しては我々は素人なので、この分野の専門家であるrinkakさんにお世話になりたいですね。現代の技術者に求められる基本スキルの一つは、「すべての部品まで自分で作ろうとはしないこと」です。本プロジェクトでも、利用可能なAPIを駆使して、なるべく楽に作っています。

rinkakは3Dモデルの登録を自動化できる「rinkak 3D Print Cloud API」を公開しているので、とても興味深く感じていました。


■最後に、quriharaさんの創作の原動力を教えてください。

Q:物議を醸すこと、ですかね。面白さや便利さの追求というのは意識しなくても創作の原動力になるのですが、「どんな人が驚いたり不快になるのか」ということを積極的に考えることも重要だと思っています。








CREATOR PROFILE

Qurihara

女子大にて情報科学の教鞭を取る。「人はなぜ、この科学の時代にオカルトに走るのか。コンピュータはオカルトに対して何ができるのか?」という思索から、「marface project」にも参画。自身は3Dデザインのスキルを持ち合わせていないが、「データから算出して、3Dモデルを作ればいいんだ!」と悟り、現在に到る。

Marsface Project

様々なバックグラウンドを持つメンバーから構成されるクリエイター集団。宇宙から文明の痕跡を発見するという壮大なスケールの酔狂に、その専門性を惜しげも無く費やす。
Web-site http://marproject.org/
★quriharaさんのrinkakショップはこちら


INTEVIEWER


新井 優佑(あらい・ゆうすけ)

インタビュアー。7年の出版社勤務を経て、独立。町工場を取材する中、日本の零細企業や小規模事業者の創意工夫には、仕事を豊かにする根源的なリソースが満ちていることを実感。手仕事からFabまで、作家の試行錯誤を追う。趣味・インタビュー、特技・インタビュー。
Twitter・ar1ys1c、Facebook・arai1983

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