No.6 「先端技術で挑む、斬新な伝統継承 - 刀×3Dプリンター -」(4/4)

2014/11/10
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“日本刀は、最後まで抜かないもの”


S: 日本刀というのはね、「抜かない」ということが非常に重要なんですよ。

ー うん。

S: 江戸時代、室町、南北朝と遡っていっても、刀は抜かないで「如何に話し合いでその場を収めるか」というのが非常に重要になっていた。それこそ今流行っている黒田官兵衛をまた例に出しますと、如何に人を活かして、殺さずに、武器を使わずに丸く収めるか。武士の、ひとつの魂として帯刀されるものだった。武器は持っているんだけど、これは絶対に使わない!という精神性ですね。



Y: うんうん。

S: そして、鞘に付属している丸い金属部分や鞘の部分でも相手を突き刺したりすると、やっぱ痣が出来たり、怪我したりするんです。抜かなくたって危害を加えることが出来てしまう。なので帯刀してお城に行く場合などは、鞘や金属部分をもう少し柔らかい素材に変えましょうとか、そういったものが礼儀としてあったんですね。お茶室に入る前は、刀掛の上に掛けて。刀を佩していると、入り口から入れないような躙口にしたりと。武器を持っているんだけど、武器は使わないという事に重きをおいて、話し合いの時も、それを使わない、持っていかない。

Y: 暗黙のコミュニケーションツールですね。平和的な交渉だけでなく、こちらに刀を抜かせるなよっていう威嚇の意味も、時にはあったんでしょうね。

S: 日本刀、持っていただくと分かるんですけれども、やっぱ重いんですよ(笑)!下ろせばそのまま切れてしまうんじゃないかっていう錯覚を容易に起こさせる。

Y: 本当に、そうですね。

S: 例えば銃だと20〜30m離れたところでも撃てるんですけど、日本刀で刺そうと思うと、本当に至近距離に詰め寄って、自分のテリトリーに入れた状態で、殺さなくちゃならないですよね。銃とかとは違って、遠くで即死しないんですよ。自分の手で斬った人が、ものっすごい苦しみの表情の中で倒れていく、出血して死ぬところをずっと見て行かなきゃいけない。「それだけの覚悟を持って人を殺せるか?」っていうと、僕が思うに、どの時代の武士であっても、もう本当の最後の最後まで、刀は抜かなかったと思うんです。なのでね、あれは武器ではなくて、自分たちを自制するための心の支えとしても持っていたものと、思うんです。

ー ええ。

S:  僕は刀を既にお持ちの方、これから所有される方に、先祖から伝わってきた大切なものとして、手入れをしながら飾って、そこに想いを馳せてくださいと話させていただくんです。刀ってタイムマシンみたいなものなので、重さとかもやっぱ当時とほとんど変わらないですし、持つと、例えばね秀吉の所有してた刀を持つとですね、今その手で持っている重さで秀吉もこの刀を持っていたんだと、わかるんですよ。

ー 体験が共有できるわけですね。仮にも、秀吉の刀に触れられるその状況がまず非日常ですけれども(笑)。

S: ははは。そのタイムマシンの一つの道具として、刀を鑑賞する。平和に想いを馳せるために僕らは展示し、販売しているという姿勢ですね。あ、そうだ。先日インドのアーメダバードに講演にいったんですけどね。ガンジーが生まれ、活動したところだったのでやはり非暴力の精神を彼らも凄くリスペクトしてて。で、こういう話をしたら、「俺らも同じだ、同じような理念でやってるんだ!」みたいな。「日本はさすがだ!!」って。精神を共有できた感覚はありましたけども。







ー 横井さん。そんな刀の鞘のデザインの話がきたとき、どう思いました?


Y: 正直、難しいモチーフであり、題材だなぁとは思いました。前提知識としても非日常的なレベルのものだし、あまりにも刀が歴史的なアイコンとして強すぎて僕が知らない作法・歴史・ルールを吸収してしていく必要もあって。なおかつ強力な武器という認識だった、はじめは。


ー 確かにお話を頂いた当初、この企画に関しては超慎重、且つ丁寧に捉えようとしていましたよね。

Y: むしろ、そこがやりがいに繋がりました(笑)。河内さんとは既に他のプロジェクトでご一緒させてもらっているので、彼が求めている時代性や新しさの意味も、事前に捉えることはできていたし、相互理解が早いので、その点ではすごくやりやすかったというか、ありがたかったですね。


ー あとはトントン拍子に決まっていきましたよね?

Y: ええ、もう是非河内さんとだからこの企画がやりたいなと思いましたよね!まず、河内さんご自身がものづくりを経由して今に至っているので、何かあっても、デザインの相談がし易いだろうと思ったし(笑)。

S: (笑

Y: こちらに対する「新しいものを期待されている感」がまた・・・
それに、新しい技術を試すことができるこの上ない機会でもありましたから!


ー 応えましょう、と。(笑

S: うははは。

Y: そりゃあね、河内さんが頑固すぎる刀業界の重鎮だったら僕はスイマセンって感じで腰が引けて、やれなかったと思うな。


ー この短刀一本を仕上げるまでに、どのくらいの人数が関わりましたか?

S: 刀の中身を作るところからすると、「玉鋼」という鋼の元を砂鉄から作る職人からはじまって、鍛冶屋に「巾木(はばき)」を作る職人に、研(とぎ)師。鞘をデザインし、つくる職人・・・とまぁ、実際は6〜7人ですかね。短刀でおよそ2ヶ月くらい掛かりますかね。

Y: 3Dプリンター側では、全体の製造工程を監督する方、データの微調整をするオペレータの方がいて、サポート剤を取り除いて、最後磨き工程する方まで考慮すると3〜4人。


ー 制作で最も苦労した点は?

Y: まだ調整は続いています(※インタビュー当時:現在は完成しています)。ちょっとしたクリアランスの問題などで。流石、伝統的な鞘は木で出来ているから、スポッっと気持ちよくハマるんですよ。ちょっとした弾力などで力を吸収しながら、刃が吸着していくような感じで。しかし、今回は素材がアクリル。緻密な計算が必要になってくる。そしてプリンターの癖もあります。なので、今回細かなオーダーとクオリティアップのために尽力してくださったスワニー さんにはとても感謝しています。




ー 今回は造形に使用した機材もすごいとのことですが。

Y: 使用させていただいた3Dプリンターは「Objet500 Connex3」という最新機種です。中空に線が浮いたような仕上げ、さらにその部分にだけ色を付与することができるのも、この機材ならではですね!そして、最終的には一手間をかけていただき、プロの方にガラスの如く磨いていただいて、超透明な鞘が上がってきました。刃の波紋、とっても綺麗に見えますよ!

S: やー、試作の段階でうちの父や職人さんたちに写真みせたんですけどねぇ、めっちゃくちゃ興奮してましたよ!「うわー実物見るのめちゃ楽しみやー!」言うて。





ーEND


▼刀×3Dプリンター「SUMISAYA」 サイトはこちら
https://www.rinkak.com/sumisaya




写真右:河内 晋平(かわち・しんぺい)
奈良県の吉野で刀鍛冶をする河内守國助15代目の河内國平の4男として生まれる。幼少期から多くの職人や弟子に囲まれて育つ。株式会社studio「仕組」代表。

写真左:横井 康秀(よこい・やすひで)
オーストラリア育ち、多摩美大卒業。ニコンにて一眼レフ等のデザイン戦略から量産まで横断的に従事。2014年よりカブクに正式参画。iF、RedDot等受賞。

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製造協力:
有限会社スワニー様 (http://www.swany-ina.com/)

株式会社ストラタシス・ジャパン様 (http://www.stratasys.co.jp/)








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