14.「”光”を宿す新たな色彩」mattbagさん

2015/04/03
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ディスプレイの向こう側から私たちの手元にキャラクターが出力された時、ペンタブレットでは決して描くことのできない生の光の陰影が作品を照らす。絵として描いてきた光や影のように、固定された陰影から毎時毎秒変わるリアルな光が生み出す陰影のグラデーションは、またキャラクターに異なる命を吹き込む。3Dプリンターによって、ラップトップからキャラクターが飛び出す魅力を思う存分に体感しているクリエイターがmattbagさんだ。ゲーム会社でキャラクター制作をする傍ら、3Dプリンター向けの創作も続ける彼に、3Dプリンターを使い始めたキッカケから、創意工夫の要点まで伺った。ポイントは、3Dプリンターで出力される際の体積やポージングを意識することだと言う。




■普段お仕事は何をされていますか?


私はソニーコンピュータエンターテイメントヨーロッパのゲリラゲームスの主要アーティストです。私の仕事は多岐にわたり、3D製作者として私はキャラクターアーティスト、アニメーター、また最近ではこうした3D関連の作業環境を整えたりもします。私のチームは最近、PS4のキルゾーンシャドーフォールDLC(ダウンロードコンテンンツ)に関連した作業を終え、現在は未発表の新作の面白いゲームの制作に入っています。仕事以外ではキャラクター制作、3Dプリント用のキャラクターを含めたオリジナルアニメーション制作を楽しんでいます。


mattbagさんが所属しているゲリラゲームズ開発のFPSゲーム、
「KILLZONE(キルゾーン)」より。かっこいいですね!


■3Dプリントに限らず、創作活動自体はいつからはじめましたか?


ええと、私が思い出せる限り、私は子供の頃いつもクレヨンでお絵かきをしたり何かを作ったり粘土で制作をしたり、10代の頃はアクリルペイントや骨組みを作ってそれをアニメ化したりしていました。幸運にもボーンマスで伝統アニメーションを勉強し、これが結果的に私の最初の仕事につながりました。パソコンとプレイステーション1で発表された「デストラップ ダンジョン」を手掛けた伝説のイアン・リビングストンと働いていました。



■創作活動のきっかけとなったのは?


はい、私はいつも身の回りのものにアイデアを駆り立てられてきましたと思います。アニメ化された映画やマペット系は何でも好きで、おもちゃや小物など、機能的なだけでなくプレイしたいと思わせるものにいつも魅了されています。常にそのようなものを作りたいと思ってきましたし、いまだにその気持ちは変わりません。

オリジナルシリーズ"Weird Little Guy"より。rinkakスタッフにもファンがおりますε(= =)3


■創作にあたって気をつけている点や、こだわりは?


良い質問ですね。モデルの比率やスタイルに関する考えを除いて、バランスと素材の量を考えなければならない。これはベースが必要だろうか?穴をあけることができるのか?最終的な造形はどのくらいのサイズにすべきだろうか?私は型を完全な状態にしつつ、
製作コストを下げる事に努めますね。それを1cmか2cm小さくすることが可能なように、繊細な素材でもくり抜き穴をあけることができるということは、大幅に製作コストを下げることにつながりますから。(※3Dプリント造形は体積がコストに影響するため)もし人々が私の3Dモデルの一つにお金をかけるという選択をしたら、そのお金に是非とも価値を見出してほしいと思います。



■アイデアを得るためのインスピレーションはどこから得ていますか?


私の頭の中には、いつも沢山のアイデアがカタカタと鳴っていて、 引き金があるたびに一つずつ外へ出てくる感じですね。

例えば、私の ”Weird Little Guys” は、あるテレビのコンペでデザインしたものから来ていて、木の周りを走っている、頭が大きな、とても小さな生き物というイメージだけが浮かんでいたのですが、まだコンペで出せるようなものではありませんでした。しかし私はこの小さな子を成長させ、3Dプリントできるアニメーションモデルにしたら面白いのではないかと考え付きました。
この結果は好ましいものだったし、実際に同じような方法でなにか他の生き物がつくれるのではないかと思わせてくれました。そこで、私の彼女の姪っ子たちに、お気に入りの動物を提案してもらってシリーズを作ることにしたんです。問題はそれらのデフォルメの程度を、女の子たちが選んだ動物として認識できるよう、イメージを維持する事でしたね。また猫の場合は
、インターネットミームの「Grumpy Cat」の特集をテレビでぼーっと眺めている時に思いつきました。ちょっとクスっとするような数枚のスケッチを描いて、その二週間後にそれらは実際に私の棚に並びましたよ。


Grumpy Cat。かわいいくせに、ワイルド!



■3Dプリンターを使用したきっかけがあれば教えて下さい。


数年前、ちょうど出たばかりのPhotogrammetry packageで遊んでいました。ご存じのように、これが、3D作品を作る用のソフトウェアで、複数の連続した写真をつなぎあわせ、
擬似的に3Dスキャンデータが生成できるものです。いくつか試したあと、とてもしっかりしたな3Dヘッドスキャンができました。もし、この為に良いベースを作ることがでできたら、どんなに格好良い作品になるだろうかと、考えられずにはいられませんでした。
一度はどうにかして印刷してみたのですが、当時は他のことに気を取られ、そのあとはすっかり忘れてしまいました。それからおよそ2年後、記事で偶然3Dプリントの進歩について書かれている記事を見つけて。それはとっても興味深いものでしたね。それから、少し調査をして私がかつて挑戦しようとしていた、3Dプリントの色があることを発見しました。ヘッドファイルを掘り起し、なんとかしてZBrushを使って型を付け、3Dプリント用のカラーファイル変換方法も発見したのが、きっかけでしたね。そのとき私はこれほどやみつきになるは思いもしなかったです!



■3Dプリンティングが創作活動にどういった影響を与えましたか?


空いた時間は大抵、何か物を作るか、他の3Dプリントに関係するものを製作していますね。あとは、少し自分の生活を見直そうと考えているので、今後は3Dプリントがもたらしてくれるアイデアの為にもっと時間を割くことができるようになると思います。

上記の3Dモデルをフルカラー石膏で出力すると、こんなかんじ。




■ご自身が作成しているキャラクターが3Dプリンターで出力された時の、率直な感想は?


ピクセルから触れるものを作るときは、いつでも刺激と驚きがありますね!それがどんなふうに見えるのかわかっているけれども、実際の光でモノを見ると、素材の表面はアート作品に新たな次元を与えてくれますね(^ ^)。それに人々は同じキャラクターのイメージを見る時よりも、3Dプリントで造られたものに対してとても良い反応を示してくれます。3Dプリンターは作品をよりリアルにしてくれ、まるで2Dピクセルの牢獄から自由になったように見えるでしょう。



■ビデオゲームのキャラクターを3Dプリンター用にモデリングし直す際、実際に取り組んでみて初めて分かった「気をつけるべきポイント」は?


ビデオゲームのキャラクターは、最も能率的にモデリングされています。これは、ポリゴンメッシュ(※3Dモデル全体を構成する面の集合)が閉じていないことを意味しているので、3DCGをいじれる方ならきっと、必然的に「プリントしたい」「ああ、ここ改造したい!」って思えるディティールが発見できるでしょう。

私自身、ほぼ最初からキャラを改造する勢いで何度かプリント用のゲームモデルを準備していて気がついたことは、やらなければならないことが本当に沢山あるということでしょうかね。もし、幸運にもカスタム利用可能な高解像度3Dモデルを得られたとしても、いい3Dプリント結果を得るためには、やはり調整しなくちゃいけないことが必ず出てくる。大抵のモデルはダイナミック過ぎないダヴィンチのポーズのようなバリエーションですから、キャラクターをより良い格好で3Dプリント出力するには、カスタム作業中モデルデータの細かな調整にばかり時間を取られすぎず、ポージングにも気を使わなければなりません。



mattbagさん、3Dプリントされた作品たちを前にダークネス×お茶目な笑顔!



■次は何を作りたいですか?


最近はメディアをミックスさせて小さなアート作品を制作していますが、その核となる部分は、3Dプリントに大きく頼っていますね。あんまり言いたくないのですが、それは
私の現在の3Dプリントのポートフォリオとは少し異なっていて、少しだけエッジが効いた、幻想的な側面があるんです。またアクセサリーや、できるなら動物などを組み合わせて私のこうした制作の骨組みを発展させたいと思っています。また、私はオートマトン(※自動で動く人型のロボット)や、3Dゾエトロープ(回転のぞき絵)などにも、とても興味があるんです。これらのラインをリスト化して、、、うーん、もっと時間が必要ですね!



■普段お使いのソフトは?


家では圧倒的にZBrushを使っており、ちょうどV4r7 を手に入れたところです。
Mayaのversion 2014、フォトショップも使っています。

■それらの良さはどんなところ?


そうですね、3Dプリントでの芸術品をつくることに興味のある方なら、ZBrushを勧めますね。この製品は学ぶのに少々時間がかかりますが、万能で使いやすく、3Dプリントフレンドリーなソフトです。また3Dソフトウェアの最適な価格だと思います。









CREATOR PROFILE

mattbag

ソニーコンピュータエンターテイメントヨーロッパにて、ゲリラゲームスの主要アーティストを務める。PlayStation4のゲーム制作といった第一線で活躍する中、3Dプリンターという新しいフィールドに飛び出し、立体物のキャラクターも創造する。rinkakでは、色彩豊かなキャラクターを多く出品する。

mattbug's Website

http://www.mattbagshaw.com
★mattbagさんのrinkakショップはこちら


INTEVIEWER


新井 優佑(あらい・ゆうすけ)

インタビュアー。7年の出版社勤務を経て、独立。町工場を取材する中、日本の零細企業や小規模事業者の創意工夫には、仕事を豊かにする根源的なリソースが満ちていることを実感。手仕事からFabまで、作家の試行錯誤を追う。趣味・インタビュー、特技・インタビュー。
Twitter・ar1ys1c、Facebook・arai1983



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