No.5 「時代が向いた時、自分が一番であれるように」前田滋人さん

2014/05/22
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ジェネレーティブ(プログラムによる自動形態生成)な手法で3Dプリンターアートの第一線を駆ける、前田滋人さん。科学万博つくば’85によってテクノロジーとアートが賑わいを見せる頃、前田さん自身の舵もメディアアートの方向へと大きくシフトさせたという。筑波大学大学院芸術研究科を修了後、作家として、講師として、3DCGと3Dプリンターの可能性を伝えてきた前田さんの世界をご紹介致します。





■筑波大に在籍する以前は全く違う大学にいらっしゃったとか…?
前田さん(以下M): え~、・・・体育系。(一同笑)子供の頃からずっとテニスをやっていたんです。無謀にも、「テニスで食べよう」と考えていました(笑)。それで体育系に進んだんです。しかし、体格の条件的にも並の努力では、並にしかならないと気づきました。やっぱりプロって体格や環境に恵まれてたりセンスが伴っていたり。その上で努力というものがあって、上に行くわけですよね?全部が並だと並にしかならないと諦めて…。平行して、CGやメディアアート等がやりたいな、と思っていたんです。




■いつ頃の事ですか?
M: 1984年頃で、今でこそ選択肢もありますが、当時は主要な美術大学でもメディアアート関係の学科は開設されていなくて。それで一番近しいところは筑波(大学)だろうということで選びました。ちょうど、つくば博(※1)が開催される直前の頃だったんですけれども。
(※1)つくば博:[人間・居住・環境と科学技術]をテーマにした1985年開催の国際科学技術博覧会(科学万博つくば’85)のこと。小中学生からの一般公募により決まったマスコットの「コスモ星丸」は当時大変な人気を集めた。


[ ヨツメフシコンボウ ]

[ シンカイタラチネ ]





■つくば万博、懐かしいですね!
M: いわゆる「ハイテクアート」がブームの頃。大学の頃、僕はデザインで仕事するというよりアートで食いたいと思ってましたが、CGもまだそんなに世の中に出回ってなくて、大学を出てからは食べるために、デザインをやっていました。その頃美大出の兄が、退職して会社を立ち上げるということで、兄に「一緒にやる?」と言われて。
会社は現在も兄とやっています。講師の仕事は、最初は人づてで専門学校で非常勤を数年勤務して、そのうちに大学の非常勤を掛け持ちで数校という感じです。




■その時代から、前田さんは何冊かCGソフト系の本を執筆されていますよね。弊社のエンジニアも学生時代に前田さんの本を読んでいたみたいです...(笑)
M: うふふ!なんかお恥ずかしい..。(一同笑)
結局、何かこういったソフトを使って、モノを作る時ってPhotoshopだけで終わるわけではない。どのデータが何とどう連携していけばモノが出来るのかっていうことを解説した本って、当時は無かったんですよね。PhotoshopやIllustratorなどの専門書はあるけれども。本だけでなくて、ソフトが相互に連携している簡単な解説書ができないか、ということでCDROMで出したりもしました。




2012年 個展《Subspecies[亜種]》より




■プログラムで形態を自動生成するGMP(Generative Modeling Project)は前田さんの代名詞にも感じます。先日も個展を開催されていましたが、現在の作風(スタイル)はいつ頃確立したのですか?
M: 2010年くらいだと思います。3Dプリンターが個人でも使えるようになってきた頃ですよね。
あぁ、3Dプリンターで初めて作った作品がこれです



身をよじって今にも動き出しそうです...! 出力はZprinter。



■かわいいですね!これはどこで出力したんですか?
M: 大分の短大に毎年夏だけ非常勤で講義に行っているんですけれど、そこの大学に、Zprinterが入ってたんですね。
「何か作ってみる?」と言われたので、20分位でチョイチョイってモデリングして。・・・たいしたもんじゃ、無いんですけど(笑)。ナマコみたいな。でもね、「あぁ、モデリングした通りに本当に出てきたー!」って、ものすごい驚きがあったんですよねぇ。それで「設計した通りに出てくるのなら、いくらでも可能性はあるな」と。慣れてしまえば、幾らでもモデリングなんて出来てしまうし、それが手に取れるかたちになるっているのは、ものすごいショックでしたね。



TITLE[ Yomi_no_Nushi ]


2012年 個展《Ortus Numerica[オルトゥス ヌーメリカ]》より




■ところで、前田さんの作品は海の生物のような作品が多く見られますが、インスピレーションはやはり実際の海から?
M: ええ、長いことスキューバーダイビングをやっていまして。1992年にちゃんとライセンスをとって…。最近は年に一回、夏に入るくらいですね。まあ植物とか虫とかも好きなので、いろんな所からインスピレーションはもらいますけど。




2014年 個展《分岐点[Palmitem]》より
形態生成にはBlenderとPythonが使われている。

ブルーに内照する台も御自身の3Dプリンターで製造。
まるで海の底に降りてきたかのような錯覚を覚える。




■創作上でのこだわりを教えてください。
M: 他の人がやらない事が、やりたいですよね。先程のテニスの話もそうですが、一つ言える事は、今世の中で流行っているものをやるとですね、既に先駆者は居るわけですよね。必ず後追いになっちゃうけです。そうすると、当然そこに追いついたり追い抜いたりすることはものすごい努力を必要として、大変なわけです。だったら、全然違った方向を向いて、走ってた方がいいだろうというのは、あります。
3Dプリンターでまだ誰もアート作品を作っていない時に、「あっ これだろう!」って思ってパっと走り始めちゃう、とか。自分の走っている方向に、時代が向いた時、自分が一番であれるようにって。…ま、一番というのは比喩で「そういうつもり」でやっていますね…。




全てオリジナルで作られたインタラクティブ作品。甲装は勿論3Dプリンタ製造。
起動させると6本の足を動かして進む。センサーで障害物を感知すると、
方向転換を行う。カシャカシャと鳴る軽快な機械音が心をくすぐる作品。




■Blenderを使い始めたのも、そういった動機からですか?
M: そうですね!まだBlenderが世の中でも全然使われていないときにBlenderを見て「あ、これだ。これは来るだろう!」とピンと来て。作った画像などをネットで発表しているうち、Blenderを開発していた会社から声が掛かりまして。



■おおー!かっこいい。(写真集を見ながら)
M: Blenderで制作した作品で「作品集を出さないか?」って言ってもらって、それも今まで制作した過去の作品集ではなく「新しく、完全にオリジナルで作品を作ってくれ」ってオファーで。けれど入稿までに三ヶ月くらいしか時間がなくて(笑)。結局、全部三ヶ月くらいで作ったんですけれども..。出版は2000年頃なので今見ると恥ずかしい出来なのですけどね。



[ 殻 ] Blenderの本社があるオランダにて1000部限定で出版された画集。



■この画集の3DCG作品のレンダリングもBlenderで行っているんですか?
M: ええ。まだやっぱり、Blender自体の性能も、まだ荒削りな所があった頃で…。じゃあ、その限られた中でどうやって作っていこうかっていろいろ考えてやってました。




■大変貴重な本ですね…!
M: そう、この画集、たった1000部しか出版されていないんですよ(笑)。けれども、 去年オランダ(開発会社のあった本国)で開催されたブレンダーカンファレンスで、この画集を持ってきた人が居て。…まだ若いヤツなんだけど、何故かコレを持って声を掛けてきた。「これ君の本だろう?サインしてくれよ!」って(笑)。「ええぇ~!?」って驚きながら、サインしてきましたけれども。



インタビュー中に光造形3Dプリンターで出力していた作品を見せてくれました。
黒い棒状の部分はサポート材。


前田さんのアトリエは標本収集のある理科室を覗いている気分。





■データと実際出力する際に、気をつけていることがあれば教えてください。
M: ジュエリー系だと、…これは外側が金メッキ、内側ブロンズです。こうなってくると、細いところが作れないので、出来るだけイメージを壊さず、折れないように太らせる。そこはポイントになってきますね。


中央上のカメレオンはrinkakにも出品中のアクセサリー。
最近は繊細なデザインも様々な金属で3Dプリントできます。



■今後のやりたいこと、夢など、ありますか?
M: ・・・夢!?(一同笑)まぁ、近々の計画はあります。「自動的に(ジェネレータで)作る」ことと、「手で(3DCGソフトで)モデリング」すること、この両方を組み合わせて作ってもいいなって、思っているんです。今までは、これらを別々のものとして使っていたんですけれども。「コンピューターアシステッド」的な使い方で制作していっても、いいなって思っています。具体的には、全体のボディはジェネレーティブで作って、細か~いディティールは手で作っていけば、もっと面白くなっていくんだろうなと、考えています。






PROFILE


前田 滋人(まえだ・しげと)

1962年 兵庫県生まれ
筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了
コンサルティング会社を経て、(株)ウード デザイン職。
東京家政大学、日大芸術学部、大分県立芸術文化短期大学等で非常勤講師。
自然からエレクトロニクスまで幅広い興味の下、オブジェから音楽までいろいろ作る人。



★クリエイター出品ページもCHECK!

https://www.rinkak.com/shop/sigma6289

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