漆×3Dプリンターのデザインメソッド② 秋山かおりさん(STUDIO BYCOLOR)

2015/07/07
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rinkakは、伝統工芸とテクノロジーの商品開発を積極的に行ってきた。過去には藍染仕上げ、日本刀の鞘の製造といった試みがある。第3弾目は、[ 漆×3Dプリンター ]のシリーズでローンチ。今回は、「霧漆-kiri-urushi-」のデザイナー、秋山かおりさん(STUDIO BYCOLOR)のデザインメソッドをご紹介。




◼︎今回の試みについて


素材の表現の仕方によって、現代生活の中における「漆」と「積層アクリル」の双方の価値を見出し、先端技術と伝統工芸の新たな出会いを表現できるよう注力しました。



▲デザイン開発中の霧漆。



◼︎デザインコンセプトについて


本来、深い艶を持つ漆という伝統的な表面加工が活きる空間は「仄暗さ」の中にあります。光をコントロールできる現代において、明るい空間でさえも漆の美しさや奥ゆかしさを感じられる方法を検討しました。その結果、「器の外側には漆塗りをしない」という大胆な決断をさせていただきました。3Dプリンタによるアクリルの積層痕を木目のように感じていただきたく、また「霧」の濃淡を表現するためにあえて凹凸を配することで、「霧」の中に漆がふっと浮かび上がるようなイメージを形にしました。


◼︎デザインプロセスについて


古く漆器がもつ要素をそのままに、「霧」を表現するため「透明感」「奥行き感」「涼感」をいかに視覚で認識させることが出来るかという部分で腰から胴にかけて、霜や氷をイメージするパターンを凹凸に配することでアクリルに厚みの変化を持たせ表現することが出来ました。

高台内にも漆を塗っていただくことで、表裏・外内の関係をよりはっきりと表現しています。
(※高台(こうだい)とは、器の底につけられた、卓に接する脚の部分を指す。)

▲内側にたっぷりと塗布された漆が、存在感を深める。
期せずして現れた3Dプリントの特性でもあるアクリルの積層痕の掠れも、
霧のような質感演出に一役買っている。



◼︎3Dプリンターと漆を組み合わせる上での注意点とは?


漆を塗っていただく内側部分に関しては、従来の漆器とあまり形状が変わらないので問題は無かったのですが、積層アクリルが露出する外側の部分に関しては、アクリルの黄変防止や食品衛生法に準拠した状態として完成させる必要があったため塗装の部分で大きな課題がありました。

ただ、金沢の若山さんという素晴らしい塗装会社さんとお会いできたことでこの問題をクリアすることが出来ました。本当に感謝しております。




◼︎どんな方に使ってほしいですか?


今回、海外に向けた企画であったため、サイズを多少大きくしています。日本の伝統文化・伝統工芸を異なる文化の方々に少しでも伝えられたらという思いがあります。もちろん、日本の方々にもぜひ昔からの行事、ハレの日を家族や友人と共に祝う際に、この器の存在で少しでも祝いの場を彩っていただければ幸いです。




Photo by Danny danks





CREATOR PROFILE

秋山かおりさん(STUDIO BYCOLOR)

2002 年 千葉大学工学部デザイン工学科卒業
2002 年~2012 年 株式会社イトーキ/商品企画・ブランディング・デザイン・カラースキーム
2013 年 STUDIO SAMIRA BOON(オランダ・アムステルダム)
同年 STUDIO BYCOLOR 設立
グッドデザイン賞受賞、富山プロダクトデザイン賞入選 他

urushiサイトで「霧漆」を見る




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